社長外国人を雇いたい気持ちはある。ただ出ていく金ばかりで、戻ってくる話は聞かないんだよ。
外国人雇用の助成金を調べると、名前の似た制度がずらりと出てきて、どれが自分に関係あるのか分からなくなります。中小企業がまず見るべきものは、3つです。しかも、そのうちのひとつは「外国人を雇っていること」自体が入口になります。
私はバングラデシュ人の夫と30年以上暮らし、企業で35年以上、事務と情報管理の仕事をしてきました。ただし、この記事は私自身が助成金を申請した体験ではなく、厚生労働省が公表している制度情報を、経営者の方が最初に知っておきたい順に整理したものです。
この記事は2026年8月時点の情報です。助成金は年度ごとに要件・金額が変わります。申請前に必ず管轄の労働局・ハローワークで最新の要領をご確認ください。
外国人雇用の助成金は、まずこの3つから見る
| # | 制度名 | ざっくり何にお金が出るか | 外国人特有か |
|---|---|---|---|
| ① | 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース) | 就業規則や社内マニュアルの多言語化、相談体制の整備など | 外国人専用 |
| ② | 人材開発支援助成金 | 仕事に関係する研修・訓練(専門用語としての日本語も条件付きで対象) | 共通(国籍を問わない) |
| ③ | キャリアアップ助成金(正社員化コース) | 有期契約の人を正社員に転換したとき | 共通(国籍要件なし) |
(厚生労働省の公表情報をもとに整理。2026年8月時点)
順番には意味があります。①は外国人を雇う会社だけが使える国の助成金。②は、外国人採用でよく聞かれる「日本語研修」の話。③は外国人特有ではないけれど、金額が大きい。この順で見ていきます。
①外国人を雇っていること自体が入口——人材確保等支援助成金
長い名前ですが、中身はシンプルで、外国人が働きやすい職場をつくる取り組みにお金が出る制度です。
主な要件(すべてではありません)
- 外国人労働者を雇用している事業主であること
- 「雇用労務責任者(外国人の労務管理を担当する人)の選任」と「就業規則等の多言語化」を必ず導入すること
- そのうえで、「苦情・相談体制の整備」「一時帰国のための休暇制度」「社内マニュアル・標識類の多言語化」のいずれか1つ以上を実施すること
- 整備計画の期間が終わったあとの一定期間に、外国人労働者の離職率が15%以下であること
支給額は、1つの制度を導入するごとに20万円、上限80万円です(2026年8月時点)。



社内マニュアルの翻訳で対象になるのか。それ、どのみちやる話じゃないか。
そのとおりだと思います。この制度の一番の値打ちは、もともとやったほうがいい取り組みに、後からお金が付いてくるところにあります。手順書を書いて渡すという考え方は、外国人への仕事の教え方で書いたとおりで、外国人材を受け入れるなら遅かれ早かれ通る道です。
ただし、離職率15%以下という要件があることには注意してください。「翻訳して終わり」ではなく、辞めずに働いてもらえたかどうかまで見られる制度です。
②外国人雇用の助成金で日本語研修は対象になる?——人材開発支援助成金の線引き
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
人材開発支援助成金は、従業員に研修を受けさせた会社を支援する制度で、2026年8月時点で7つのコースがあります(人材育成支援コース、事業展開等リスキリング支援コースなど。コース構成は年度で変わります)。国籍を問わない制度なので、「外国人だから使えない」ということはありません。
以下は、そのうちの「人材育成支援コース」のQ&Aについての話です(厚生労働省「令和6年11月版 人材育成支援コース 事業主Q&A」。2026年8月時点で確認)。ここにこう書かれています。訓練の対象者が外国人であるか否かにかかわらず、職務に関連した専門的な知識・技能を習得させる訓練であるなど、人材育成支援コースの支給要件を満たすものであれば支給対象になる、と(Q27)。
問題は日本語研修です。同じQ&AのQ28に、この線引きがはっきり書かれています。
職務に関連した専門用語等を習得させるための訓練であれば対象となり得ますが、日常会話程度の日本語の習得のみを目的とする講習は助成対象となりません。
同じQ&Aには例も挙げられています。介護の仕事をする外国人労働者に、介護・医療の専門用語を学ばせる研修は対象になり得る。一方、その人が私生活で必要になる日本語を学ぶ研修は対象にならない、と。
なお、これは「人材育成支援コース」についての説明です。他のコースの扱いは、それぞれのQ&A・支給要領でご確認ください。



つまり「日本語教室」じゃなく「うちの仕事の言葉を教える研修」ならいい、と。
私はこの線引きを読んだとき、ずいぶん現実的だと感じました。現場で本当に困るのは、日常会話ではなくその職場でしか使わない言葉だからです。「養生」「段取り」「バリ取り」——日本語教室で習う言葉ではありませんし、日常生活で出てくる言葉でもありません。職場で教えるしかない言葉なのです。
なお、来日前にどこまで日本語を育ててから送り出すかは人材会社によって差があります。来日後の研修と合わせて考えると、費用のかけどころが見えてきます。
除外されるケースもあります(主なもの。すべてではありません)
- 外国人技能実習生については、OJT(現場で働きながら教える訓練)への実施助成を含むもの(認定実習併用職業訓練、有期実習型訓練)は対象外
- 雇用保険の適用対象外の人(外国人家事使用人、ワーキングホリデーなど)は対象外
- EPA(経済連携協定)で受け入れた看護師・介護福祉士の候補者のうち、試験に合格する前の方は対象外
逆に言えば、雇用保険の被保険者であれば対象になり得ます。フルタイムで働く特定技能1号の方は通常、雇用保険に加入します(個別に対象になるかは労働局にご確認ください)。
③有期から正社員へ——キャリアアップ助成金(正社員化コース)
有期契約で働いている人を正社員に転換したときに使える制度です。国籍要件はありません。有期契約の外国人を正社員化した場合も、対象になり得ます。
前提として、在留資格の上でフルタイムの就労ができること、雇用保険の被保険者であることが必要です(主な前提。すべてではありません)。在留資格によっては働ける時間に制限があるので、ここは必ず確認してください。
金額は、重点支援対象者(3年以上有期で働いている方など、国が重点的に支援する区分の人)の場合、有期から正規で1人あたり80万円(中小企業)、無期から正規で40万円です(2026年8月時点)。外国人特有の制度ではありませんが、3つの中では金額が大きい部類に入ります。
ただし、ここは在留資格によって話が変わります。この制度は「無期の正社員に転換すること」が前提です。一方、特定技能1号は日本にいられる期間に通算の上限があり、在留期間の更新も必要です。そのため、在留資格によっては「正社員化」という形が取りにくい場合があります。どの在留資格の方が対象になり得るかは、必ず労働局や社会保険労務士にご確認ください。
外国人雇用の助成金で、よく紹介されるのに使いにくい制度
よく名前が挙がるのに、実際には条件が合いにくい制度が2つあります。ここは正直にお伝えしておきます。
- トライアル雇用助成金(一般トライアルコース):ハローワーク等の職業紹介を経て雇い入れること、紹介より前に選考を始めていないこと、期間の定めのない雇用への移行を目的とすることなどが要件です(主な要件。すべてではありません)。支給要領に国籍や在留資格による制限は書かれていませんが、海外から呼び寄せる特定技能の採用では、これらの要件を満たすのが難しいと考えられます。
- 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース):「外国人であること」自体は対象要件になっていません。対象は高年齢者(60歳以上)や障害のある方、母子家庭の母などの区分で、外国人に固有の入口は「補完的保護対象者」「ウクライナ避難民」の2区分のみです(主な対象。すべてではありません)。外国人でもこれらの区分に当てはまれば対象になり得ますが、一般の中小企業が外国人採用のために使う制度ではありません。



名前で期待させておいて、中身は違うのか。危ないところだった。
もうひとつ、制度は年度で本当に変わります。たとえば業務改善助成金は、令和8年度の交付申請の受付開始日が9月1日からです(2026年8月時点)。年度が替わればすぐ使える、というものではないのです。ネット記事の数字をそのまま信じず、必ず最新の要領で確認してください。
なお、国の制度とは別に、自治体独自の補助金があります。東京都には「中小企業の外国人従業員に対する研修等支援助成金」があり、日本語教育が柱で、ビジネスマナーや異文化理解の講座は日本語教育と組み合わせる場合に限り対象になります。対象となる従業員の日本語のレベルにも条件があります(一般コースの標準プランは経費の2分の1・上限25万円)。2026年8月時点では令和8年度の募集が行われていました(受付は令和9年1月14日まで。締切・内容は変わることがあるため、最新はリンク先でご確認ください)。
あなたの自治体にも似た制度があるかもしれません。有無も金額も対象もまったく違うので、お住まいの都道府県・市区町村の産業労働部門に問い合わせるのが確実です。
まとめ
- 外国人雇用の助成金は、①人材確保等支援助成金(外国人専用)②人材開発支援助成金(研修)③キャリアアップ助成金(正社員化)の3つから見る
- 日本語研修は「職務に関連した専門用語」なら対象になり得るが、日常会話だけを目的とする講習は対象外
- トライアル雇用助成金は、職業紹介を経ることが要件のため、海外から呼び寄せる採用では要件を満たしにくい
まず取るべき行動は一つです。顧問の社会保険労務士がいれば、この記事を見せて「うちはどれが使えますか」と聞いてみてください。いなければ、管轄の労働局・ハローワークでも相談できます。そもそもの採用ルートごとの費用比較は、在日外国人という選択肢にまとめています。



まずは社労士に、この3つの名前を出して聞いてみる。それならできる。
この記事は2026年8月時点の情報です。助成金は年度ごとに要件・金額が変わります。申請前に必ず管轄の労働局・ハローワークで最新の要領をご確認ください。
具体的な申請手続は社会保険労務士にご相談ください。当ブログは申請の代行・個別のご相談はお受けしていません。雇用関係助成金の支給申請書類の作成・提出代行は、社会保険労務士法により社会保険労務士の独占業務とされています。同じように、在留資格の申請取次は行政書士・弁護士の業務であり、人材の紹介・あっせんは有料職業紹介の許可が必要な領域です。当ブログでできるのは、制度の存在と要件と公式の窓口を情報としてお伝えするところまでです。








