「なぜ、たくさんの国のなかでバングラデシュを選ぶのですか」——人材の受け入れを提案する立場だと、クライアントからこう聞かれることがあると思います。「人手が足りないから」「コストが抑えられるから」だけでは、相手の心はなかなか動きません。もう一枚、説得力のあるカードがほしいところではないでしょうか。
業界の人「安いから」以外の、刺さる説明がほしいんです。
知りたいですよね。バングラデシュは、中国に次ぐ「世界第2位」の衣料品輸出国です。つまり、世界中の有名ブランドが「品質と納期に応えられる国」として選び続けてきた実績があります。「安い労働力の国」ではなく、「ものづくりで世界に選ばれてきた国」——この一次情報は、商談の場でそのまま使えます。
わたしの夫はバングラデシュ人で、30年以上、家族として彼の国とのつきあいを続けてきました。わたし自身も企業で35年以上、事務と情報管理の仕事をしてきました。単なる数字の報告にとどまらず、当事者としてその『温度感』までをお伝えします。
データで見る——バングラデシュは衣料品輸出「世界2位」
まず事実から。ジェトロ(日本貿易振興機構)がWTO(世界貿易機関)の統計をもとに紹介しているところによると、バングラデシュの衣料品輸出は、中国に次ぐ世界第2位です(2024年の統計、2025年時点の情報)。
| 順位 | 国 | おおよそのシェア |
|---|---|---|
| 1位 | 中国 | 約3割 |
| 2位 | バングラデシュ | 約8% |
| 3位 | ベトナム | 約6% |



え、ベトナムより上なんですか。
そうなんです。ここが多くの人の”思い込み”とズレるところ。バングラデシュ=最近になって注目され始めた新興国、というイメージを持たれがちですが、こと縫製においては長年、世界のトップクラスを走り続けてきた”先輩”なのです。
私たちが普段着ているファストファッションの服にも、「Made in Bangladesh」のタグは驚くほど多く入っています。
※国際情勢や統計の集計方法により順位・数字は変わります。2025年時点でジェトロが紹介する情報です。詳しい数字は記事末尾の出典でご確認ください。
夫の「なんだ、自国製か」——数字を、人の話に変える
ここからお届けするのは、わが家だからこそ語れるリアルなエピソードです。
以前、日本で購入した服を夫が「いい服だな」と気に入って手に取ったときのこと。タグの「Made in Bangladesh」に気づいた彼は、少し照れくさそうにこう言いました。



なんだ、バングラデシュ製のものだったのか。
このときの夫の気持ちを、そばで見ていてこう感じました。ひとつは、自分の国のものだと微塵も思わずに「良いものだ」と選んでいたという、少しばつの悪いような気づき。もうひとつは、自分が良いと思って選んだものが、自国で作られていたという、静かな誇らしさです。
自虐と誇り、その両方が混ざったような表情でした。わたしは、この小さな一言に、バングラデシュという国の実力が全部詰まっている気がしたのです。質を知らずに選んでも「良い」と感じさせる——それを支えているのが、あの世界2位という数字なのだと。



数字より、その一言のほうが刺さりますね。
「安い労働力」という見方を、そろそろ変えてみませんか
では、この事実は人材の話にどうつながるのか。
世界2位の縫製大国であり続けるということは、「品質」と「納期」を守れる働き手が、その国に大勢いるということの証明でもあります。細かい手仕事に向き合う産業が根づいた環境で育ち、働くことにハングリーな人が多い——これは、雇う側にとって見逃せない背景です。
- ものづくりの現場が身近で、手を動かす仕事へのなじみがある人が多い
- 家族のために稼ぐという意識が強く、働く動機がはっきりしている
- だからこそ、雇う側が「安いから来てもらう」ではなく「戦力として育てる」姿勢で向き合うと、力を発揮しやすい
ただし、ここは正直に。「バングラデシュ人はみんな手先が器用で勤勉」と一括りにするのは間違いです。当然ながら個人差があり、向き不向きもあります。国の実力は「その人を信じてよい理由の一つ」ではありますが、「その人自身」ではありません。見るべきは最後は一人ひとりです。
業界の方への”先行情報”——2026年、局面が動く
最後に、業界の方向けの補足を一つ。バングラデシュは、国連が定める後発開発途上国(LDC)からの「卒業」を2026年11月に控えています(2025年時点の情報)。卒業すると、これまで受けてきた関税の優遇などが段階的に変わる可能性があり、縫製業のあり方や、人材の海外への動きにも影響しうる、と指摘されています。



その視点、クライアントに話せます。
断定はできませんが、「バングラデシュはいま、大きな節目にいる」という背景を知っておくと、目先の紹介話に留まらない、一段深い提案ができるはずです。動向は、ジェトロなどの公的な情報源で継続的に追うことをおすすめします。
まとめ
- バングラデシュは中国に次ぐ世界第2位の衣料品輸出国。「安い国」ではなく「品質で選ばれてきた国」(2025年時点・ジェトロ/WTO)
- 夫の「なんだ、バングラデシュ製か」という一言が象徴するように、質を知らずとも良いと感じさせるものづくりが、その国の底力
- ただし国の実力=個人の実力ではない。最後は一人ひとりを見る——この当たり前を外さないこと
次の一歩として、クライアントに「なぜバングラデシュか」を説明する場面で、この「世界2位」という一次情報を一枚加えてみてください。数字と、生身の実感。その両方を持っているのが、このブログの強みです。人材の”人となり”については、プライドと採用人数や人手不足倒産の記事もあわせてどうぞ。
※この記事は情報提供を目的としたもので、特定の人材の紹介・あっせんを行うものではありません。個別のビザ・在留の手続きについては行政書士などの専門家にご相談ください。統計・制度に関する情報は2025年時点のもので、今後変わることがあります。
出典:
- ジェトロ「南西アジアグローバル展開可能性調査‐バングラデシュ衣料品産業調査‐(2025年3月)」 https://www.jetro.go.jp/world/reports/2025/01/ae17ba81bb87e9c2.html
- ジェトロ「バングラデシュ縫製業は政変を経て通常操業、焦点は関税ゼロ維持」(2025年) https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2025/ddb2d9d7b191215a.html
- ジェトロ「世界2位の衣料品輸出国を維持、今後は高付加価値製品の輸出拡大へ(バングラデシュ)」 https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/12/36d789ae31aec94e.html



