専務うちに来る予定の人、日本語ちゃんと覚えてくれるんだろうか。英語も怪しいのに、そもそも言葉が通じるのか、正直不安で…
バングラデシュの言葉(ベンガル語)は、実は英語よりも日本語に近い語順を持っています。言葉の壁というと「単語を覚えられるか」ばかりが心配されがちですが、実際にコミュニケーションのしやすさを左右するのは、単語より「語順」です。そしてこの語順の近さは、彼らが日本語を覚えるときにも有利に働く可能性があります。
私はバングラデシュ人の夫と30年以上暮らす中で、ベンガル人から直接、またベンガル語の講座で、実際にベンガル語を学んできました。そのときに気づいたのが、この語順の近さでした。
「私は・りんごを・食べます」がそのまま通じる語順
日本語は「主語→目的語→動詞」という並びの言語です(言語学では「SOV型」と呼ばれます)。「私は・りんごを・食べます」のように、動詞が一番最後に来ます。
英語はこれと違い、「主語→動詞→目的語」の並びです。「I eat an apple」のように、動詞が真ん中に来ます。日本人が英語を習うときに語順で苦労するのは、この違いが原因の一つです。
そしてベンガル語は、言語学的には日本語と同じ「SOV型」に分類されます。私が実際に学ぶ中で例文を見比べたとき、単語こそすぐには覚えられなくても、語順の並びだけは日本語の感覚とそのまま重なる、という実感がありました。আমি আপেল খাই।(ami apple khai.)
| 言語 | 語順の型 | 「私はりんごを食べます」の並び |
|---|---|---|
| 日本語 | 主語→目的語→動詞(SOV) | 私は・りんごを・食べます |
| ベンガル語 | 主語→目的語→動詞(SOV) | 同じ並びで対応する আমি আপেল খাই।(ami apple khai.私は りんごを 食べます) |
| 英語 | 主語→動詞→目的語(SVO) | I(私は)・eat(食べます)・an apple(りんごを) |



え、日本語と同じ並びなのか。それなら、英語よりむしろ覚えやすいってこと?
なぜこれが雇う側にとって朗報なのか
断定はできませんが、語順が近いということは、逆方向——ベンガル語を話すものが日本語を学ぶときにも、同じ理由で有利に働く可能性があります。単語をゼロから覚える大変さは英語話者・日本語話者どちらも同じですが、「文の組み立て方」自体に慣れる負担が、英語圏の人よりは軽いはずだからです。
もちろん、これだけで「日本語の習得が早い」と保証できるわけではありません。発音・敬語・漢字など、語順以外にも覚えることはたくさんあります。ただ、「言葉が通じるかどうか、まったくの未知数」ではなく、「文の骨組みという意味では、実は近い言語同士」と捉え直せることには意味があると思います。
言葉の壁への向き合い方(現場でできる工夫)
語順が近いとはいえ、来日直後は当然ボキャブラリーが少ない状態です。教える側にできる工夫として、わが家の観察も含めて挙げます。
- 短い文で、一つずつ区切って話す。「AをしてからBして」より「Aして。次にBして」のほうが伝わりやすい。
- 結論(動詞・やってほしいこと)を先に、ジェスチャーも添えて伝える。語順は近くても、最初は単語量が少ないため、視覚情報を足すと理解が早まります。
- 敬語より、まず基本の語順・単語を優先して教える。丁寧さは後からで十分です。



言葉が通じないんじゃなくて、まだ単語のストックが少ないだけ、ってことか。それなら教え方次第で何とかなりそうだな。
まとめ
- ベンガル語は言語学的に日本語と同じ「主語→目的語→動詞」の語順を持つ。
- 断定はできないが、この近さは彼らが日本語を覚えるときにも有利に働く可能性がある。
- 語順の近さだけで安心せず、短い文・視覚情報を使った教え方の工夫は引き続き必要。
言葉の壁を過度に心配する前に、まずは短い文で話しかけることから始めてみてください。仕事の教え方そのものについては、こちらの記事「外国人への仕事の教え方」でさらに具体的な工夫を紹介しています。



