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介護の人手不足に外国人材は効くのか——疑う施設長へ、窓口で見た現実

工場長

人材会社に頼んでも、うちには回ってきません。外国人も一度失敗しました。何を信じればいいのか。

回ってこないのは、施設だけのせいではありません。介護は、国が「人が足りない」と公式に位置づけている6つの分野の1つだからです。そして外国人材は効きます。ただし、足りない分の一部を埋める程度です。入口を間違えると、同じ失敗を繰り返します。

介護の現場は、私の専門ではありません。私は企業で働いてきたので、介護については正直わかりません。だからこの記事では、良い話ではなく、公表されている数字と、私が窓口で見かけたこと、夫の周りで言えることだけを書きます。

目次

ハローワークの窓口で見た「足りない3つの仕事」

以前、ハローワークの窓口に用があったとき、掲示のなかに「建設・介護・保育」を大きく扱ったものがありました。どれも目立つ扱いでした。いつでも人が足りない仕事なのだと、そのとき気づきました。

調べると、理由が分かりました。厚生労働省は、人手が足りない分野に特化した「人材確保対策コーナー」という窓口を、全国の主要なハローワークに置いています。対象は医療・介護・保育・建設・警備・運輸の6分野。事業主には、有資格者への求人情報の提供、求人を埋めるためのコンサルティング、マッチングイベントを行っています(出典:厚生労働省「人材確保対策」)。

一覧を数えると、2026年9月時点で124か所ありました(出典:厚生労働省「人材確保対策コーナー 設置箇所一覧」。合計数の記載がないため筆者が一覧を集計。うち4か所は医療・福祉分野専門)。

介護が足りないのは、施設長の体感でも、私の体感でもありません。国が窓口を124か所つくるほど、公式に「足りない」と位置づけている分野です。求人が来ないのは、施設の魅力が足りないからではなく、そもそも取り合いになっている市場だからだと考える方が、実態に近いと思います。ただ、取り合いの市場では、求人の見せ方ひとつで差がつきます。

工場長

そうなのか。うちだけが取り残されていたわけではないんだね。

介護の人手不足はどのくらいか——外国人はどれだけ入っているのか

体感を離れて、数字を確かめます。

国の推計:2026年度に約25万人足りない

厚生労働省が2024年7月に公表した推計では、介護職員は2026年度に約240万人、2040年度に約272万人必要とされています。基準になる2022年度の職員数は約215万人ですから、2026年度に約25万人、2040年度に約57万人を新たに確保しなければならない計算です(出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」、令和6年7月12日公表)。

年度必要な介護職員数2022年度(約215万人)との差
2026年度約240万人+約25万人
2040年度約272万人+約57万人

2022年度から2026年度までの4年間で見れば、年に6万人あまり。一つの施設の努力で埋まる規模ではありません。

特定技能「介護」は約6.8万人。分野別で2位

では、外国人材はどのくらい入っているのか。出入国在留管理庁の速報値(令和7年12月末=2025年12月末時点)によると、特定技能1号(人手不足の分野で、試験に合格した外国人が働ける在留資格)の在留者は全体で382,341人。そのうち介護分野は67,871人で、全体の17.8%。飲食料品製造業に次いで分野別で2番目に多い分野です(出典:出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表等」、令和8年3月公表・速報値)。

※特定技能1号と2号を合わせた390,296人を全体として数える資料では、同じ67,871人が17.4%と表示されます。

夫の国の数字も添えます。同じ資料の国籍別の表では、バングラデシュ人の特定技能1号は全国で826人。そのうち介護は223人で、バングラデシュ人にとって介護はいちばん人数の多い分野です。ただし、全体の6.8万人から見れば、まだごく少数です。

正直に言いますと夫の周りでは製造業・建設業で働く仲間が多く、介護で働く人は身近にいません。ですから介護の現場は、体験としては語れません。書けるのは、公式の数字と制度の枠組みまでです。

工場長

25万人足りないところに、外国人は6.8万人。焼け石に水じゃないですか。

その感覚は正しいと思います。外国人材は、人手不足を解決する手段ではなく、足りない分の一部を埋める選択肢の一つです。

介護の人手不足に外国人材を使う入口は4つ——バングラデシュ人が使えるのはどれか

「外国人」とひとくくりにすると、失敗します。介護分野で外国人が働ける入口は、在留資格(日本で何をして滞在してよいかの区分)の面から4つあります(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」、令和8年3月25日 協議会運営委員会 説明資料)。

まず、使える・使えないだけを先に出します。

入口バングラデシュ人は
①EPA(経済連携協定)使えません
②在留資格「介護」使えます(国家資格を取った人だけ)
③技能実習→育成就労使えます(制度の切り替え時期)
④特定技能1号使えます(試験はダッカでも実施)

中身は4つとも違います。順に短く説明します。

  • ①EPA(経済連携協定)…国と国の協定で介護福祉士候補者を受け入れる仕組み。対象はインドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国のみです
  • ②在留資格「介護」…介護福祉士の国家資格を取った人。在留期間の更新回数に制限がなく、家族を日本に呼べます。ただし人数はごく少数です
  • ③技能実習→育成就労…技能実習は「育成就労」(技能実習に代わる新しい制度)に置き換わる予定で、改正法は一部の規定を除き2027年4月1日に施行予定。2026年9月時点ではまだ技能実習の制度で動いています
  • ④特定技能1号…介護技能評価試験・介護日本語評価試験と日本語試験(N4相当以上。日常的な場面のやさしい日本語が分かる水準)に合格した人。介護分野の第2号技能実習を修了した人は試験が免除されます。通算5年が上限(要件を満たせば最長6年)。介護分野には特定技能2号がなく、長く働くには介護福祉士を取って②へ移る設計です

施設長にとって大事なのは①です。EPAはバングラデシュ人には使えません。「EPAで来た人は定着率がいい」と聞いても、この入口は当てはまりません。

もう一つ。④は通算5年で在留期間の上限が来ます。

ただし、2026年1月に動きがありました。要件を満たせば、最長6年まで在留できる仕組みが始まっています。

きっかけは、介護福祉士国家試験の「パート合格」(試験がA・B・Cの3つに分かれ、合格したパートは翌年以降の受験が免除される仕組み)です。在留期限の直前の試験で全パートを受け、一定の成績を収めた人が対象になります(出典:厚生労働省「介護福祉士国家試験のパート合格による通算在留期間の延長に関する措置について」、2026年1月21日。主な要件のみで、すべてではありません。詳しい要件は出典をご確認ください)。「5年で終わり」と決め打ちしないでください。

5年より先も働いてもらうには、その間に介護福祉士の国家試験に合格して、在留資格「介護」に切り替える必要があります。「5年後にいなくなる前提」で計画するか、「資格を取らせる前提」で支えるか。ここを決めずに始めると、5年目に困ります。

一度失敗した施設長が、次につまずきやすい5つの場所

特定技能1号(④)を例に並べます。主な条件(すべてではありません)で、いずれも国が定めた受け入れのルール(運用方針)に書かれています(出典:介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針)。

  • 人数枠に当たって、途中で採用が止まります。受け入れ人数は事業所単位で、日本人等の常勤介護職員の総数が上限です。常勤の介護職員が5人の事業所なら、特定技能の人も5人まで。「日本人が辞めたぶんを外国人で埋める」を続けると、ある日この枠にぶつかって採用が止まります
  • 「訪問に回せる」つもりで雇って、施設内から出せなくなります。特定技能の人が訪問系サービスに入れるようになったのは2025年4月からです。本人には介護職員初任者研修の修了と実務経験(原則1年以上)が要ります。さらに施設側にも5つの義務が付きます。
  • 派遣で埋める、は使えません。直接雇用に限られ、派遣の形は認められていません
  • 「加入に費用がかかります」と言われて、払ってしまってはいけません。介護分野の協議会(業種ごとに国が作らせている受け入れ企業の集まり。加入が受け入れの条件です)への加入は必要ですが、窓口の国際厚生事業団(JICWELS)は入会費・年会費を徴収しないと公式に明記しています(名称は資料によって表記が異なります)。費用を請求されたら、それが何の費用かを確かめてください
  • 日本語試験に合格した人が来たのに、現場で話が通じず、辞めていきます。合格は要件なので全員が最低限はクリアして来ます。差が出るのは、その先まで育てて送り出しているかです。

辞める理由も、外国人だからではないことが多いものです。「続かない人」の話と、辞めさせない考え方は、介護に限らず共通です。

工場長

前に失敗したとき、人数枠も訪問の条件も、誰も教えてくれませんでした。

人材会社の説明は、どうしても紹介する側の目線になります。次は施設長が先に知っておく方が安全です。

まとめ

  • 介護は、国が「人材確保対策コーナー」を124か所置くほど公式に「足りない」と位置づけている6分野の1つ。人材会社に頼んでも回ってこないのは、施設だけのせいではない(2026年9月時点)
  • 国の推計では2026年度に約25万人の介護職員が不足。特定技能「介護」は約6.8万人で、外国人材は解決策ではなく「足りない分の一部を埋める選択肢」
  • 外国人材の入口は4つ。EPAはバングラデシュ人には使えず、特定技能1号は通算5年が上限(要件を満たせば最長6年)で、人数枠・訪問介護の条件もある。ここを知らずに始めると同じ失敗を繰り返す
工場長

要するに、外国人の前に国の無料窓口に相談して、うちの求人の弱点を見てもらえばいいんですね。

次の一歩は、外国人材の前にあります。厚生労働省の「医療・福祉ささえる求人充足プロジェクト」では、ハローワークが事業主に、求人充足のコンサルティングと雇用管理改善の支援を無料で行っています。「介護の雇用管理改善CHECK&ACTION25」というチェックリストも公開されています(出典:厚生労働省)。まず、管轄のハローワークの人材確保対策コーナーに相談してみてください。

そのうえで外国人材を検討するなら、制度の基礎と、1人目にいくらかかるかを先に読むと、人材会社の説明を自分で確かめられます。

※この記事の制度・数字は、2026年9月時点で公表されていた資料をもとにしています。制度は改正されるため、最新の情報は各公表元をご確認ください。個別のお手続きは、行政書士等の専門家にご相談ください。


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この記事を書いた人

夫はバングラデシュ人。結婚して30年以上、彼の家族とコミュニティのそばで暮らしてきました。長年の会社勤めを終えて、いま「バングラデシュ人材のリアル」を雇う側の目線で書いています。バングラデシュ人を雇ってよかったと思っていただけると幸いです!

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