バングラデシュ人を雇うことが決まった方から、こんな不安をよく聞きます。「家族の行事で急に休みたいと言われたら?」「お祝いごとにやたらお金を使うと聞くが、大丈夫だろうか?」——制度の手続きは済んでも、こういう生活の感覚こそ気になるものだと思います。
先に結論をお伝えします。バングラデシュの人たちにとって、祝い事は「個人のもの」ではなく「みんなで祝うもの」です。そして家族は、彼らの人生の中心です。この一点を理解しておくことが、実は良い雇い主になるための一番の近道です。
私はバングラデシュ人の夫と30年以上暮らしてきました。今日はその感覚が一番よく表れた、私の忘れられない出来事からお話しします。
花嫁がいない結婚祝い?——わたしが驚いた話
ある日、夫が「友達の妹が結婚したから、お祝いのパーティに行こう」と言いました。在日バングラデシュ人のコミュニティで、お祝いの会が開かれるというのです。
私は当然、主役である妹さん夫婦が来るものと思って出かけました。ところが会場に妹さんの姿がありません。夫に聞くと、こともなげにこう言うのです。
「友達の妹夫婦はバングラデシュにいるよ」
花嫁も花婿も母国にいる。それでも日本にいる同郷の仲間たちが集まって、盛大にお祝いをする。私は最初、意味がよくわかりませんでした。日本の感覚なら「本人がいないのにお祝い?」となりますよね。
でも彼らにとっては、これがごく自然なことなのです。家族のおめでたいことは、本人がその場にいるかどうかに関係なく、みんなで祝うのが当たり前。むしろ「離れているからこそ、こちらで代わりに盛大に祝う」——そういう感覚でした。
祝い事は「個人のもの」ではなく「みんなのもの」
この出来事は、彼らの価値観をよく表しています。日本では、お祝いはどちらかというと当人と身近な人のもの。でもバングラデシュでは、家族やコミュニティのお祝い事は全員の喜びです。
- 誰かの結婚は、一族みんなのおめでたいこと
- 誰かの子どもが生まれれば、コミュニティ全員でお祝いする
- 二大祭りのイード(断食明けなどの大きな祝日)には、家族が集まることに何よりの価値を置く
だから彼らはお祝いごとを本当に大切にしますし、そこにお金や時間を惜しみません。それは見栄ではなく、「家族やつながりを大事にする」ことそのものが人としての価値だと考えているからです。
これが、雇う側にとって何を意味するか
さて、ここからが専務さんのような雇う側にとって大事な話です。この家族愛の強さは、働き方に具体的に表れます。
1. 家族の慶弔や大きな祝日には、強い思い入れがある
イードのような大きな祝日や、家族の結婚・不幸のときには、「休みたい」「母国に帰りたい」という気持ちが日本人の想像以上に強くなります。これはわがままではなく、彼らの人生の芯にあるものです。頭ごなしに拒むと、一気に心が離れてしまいます。
2. 仕送りは「義務」ではなく「誇り」
母国の家族に仕送りをすることは、彼らにとって負担ではなく誇りです。だからこそ真面目に働きます。「稼いで家族を支える」ことが、働くモチベーションそのものだと考えてください。
3. 家族を大切にする会社に、強い忠誠心を持つ
裏を返せば、家族の事情を理解してくれる会社には、彼らは深い恩義を感じます。ここが日本人の従業員以上に分かりやすいところです。
| 雇う側がやりがちなこと | おすすめの対応 |
|---|---|
| 大きな祝日でも通常どおり出勤を求める | 事前に祝日を把握し、可能な範囲で配慮する |
| 急な帰国希望を「非常識」と捉える | 家族の一大事は本気度が高いと理解する |
| 仕送りの話を軽く扱う | 「家族を支えていて偉いね」と敬意を示す |
祝い事を「味方」につける小さな工夫
難しく考える必要はありません。お金をかけなくても、気持ちを示すだけで十分に伝わります。
- イードなど大きな祝日を事前にカレンダーで把握しておく(年によって日付が動くので、本人に「今年はいつ?」と聞くのが一番確実です)
- その日に「おめでとう」と一言かける、可能なら休みや早退を認める
- 本人の家族に良いことがあったら、職場でも「よかったね」と一緒に喜ぶ
たったこれだけで、彼らは「この会社は自分の一番大切なものを分かってくれる」と感じます。わが家の周りを見ていても、長く続いている人ほど、職場でこうした温かさに出会っています。
なお、これはわが家とその周辺を見てきた一個人の実感です。信仰の深さや家族との距離感には個人差がありますので、最後は本人とよく話してくださいね。
まとめ
- バングラデシュの人にとって祝い事は「個人のもの」ではなく「みんなで祝うもの」。花嫁が母国にいても盛大に祝うほど、家族とつながりを大切にする
- その家族愛は働き方にも表れる。大きな祝日や家族の事情への配慮が、そのまま強い信頼につながる
- お金は不要。祝日を把握して「おめでとう」と声をかけるだけで、味方になってくれる
次の一歩として、彼らの信仰面(食事やお祈り)が気になる方は「ハラール対応、実は難しくない」の記事へ(公開後に内部リンクしますね)。
※本記事は一個人の体験に基づく内容です。在留資格などの個別のお手続きは、行政書士等の専門家にご相談ください。